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役員報酬の調整で会社の価値はどう変わるか|正常収益力の考え方

決算書の営業利益は、オーナーの意思で大きく変わります。役員報酬を多く取れば利益は減り、少なく取れば増える。買い手はそれを知っているので、「承継後の実態」に直した利益で評価します。これが正常収益力で、オーナー企業の売却価格を最も動かす調整です。

株式会社Tsugiya M&A仲介の実務より | 更新 2026-09-20
この記事の要点
  1. 承継後になくなる費用(過大な役員報酬・節税保険・私的経費)は利益に戻して評価される
  2. 調整だけで株式価値が数千万円変わることは珍しくない
  3. 根拠を示せる範囲で行う。やりすぎは買い手の信頼を失う

正常収益力とは

正常収益力とは、売却後に買い手のもとで継続的に生み出される利益のことです。決算書の利益から、承継後になくなる費用を足し戻し、一時的な利益を除き、承継後に発生する費用を引いて求めます。

買い手のデューデリジェンスでも必ず行われる調整なので、売り手側が先に整理しておくと、交渉の主導権を持てます。逆に、売り手が主張しなければ調整されないこともあります。

主な調整項目

役員報酬の適正化:オーナーの役員報酬と、承継後に後任経営者を雇う場合の水準との差額。最も金額が大きい項目で、年間1,000〜2,000万円になることも珍しくありません。

節税目的の保険料:法人契約の生命保険のうち、節税・退職金積立目的のもの。承継後は解約されるため費用から除きます。

私的経費:社長の車両、交際費のうち私的なもの、家族の給与のうち実態のないもの。金額は小さくても買い手の心証に影響するため、正直に整理することが重要です。

親族・関連会社との取引:社長個人や親族所有の不動産を相場より高い家賃で借りている場合は差額を足し戻し、逆に安く借りている場合は承継後の家賃上昇分を引きます。

一過性損益:補助金、固定資産売却益、災害損失、訴訟費用など、毎年は発生しないもの。利益に含まれる一時的な益は除き、損は戻します。

計算例:調整で価格はいくら変わるか

15,000営業利益+12,000役員報酬の適正化+2,400節税保険料29,400調整後営業利益単位:千円
正常収益力の調整(計算例)

営業利益1,500万円、役員報酬2,400万円(承継後の適正水準1,200万円)、節税保険料240万円、製造業(営業権3年、EBITDA倍率4.5倍、減価償却900万円)の会社。

営業利益15,000
+ 役員報酬の適正化(24,000 − 12,000)12,000
+ 節税保険料2,400
調整後営業利益29,400
価格への影響
年買法:営業権の増加(14,400 × 3年)43,200
EBITDA倍率法:事業価値の増加(14,400 × 4.5倍)64,800

単位は千円。営業利益1,500万円のままなら営業権は4,500万円ですが、調整後は8,820万円。調整だけで株式価値が4,000〜6,500万円上がります。

写真はイメージです

やりすぎのリスク

正常収益力の調整は、根拠を示せる範囲で行うことが原則です。役員報酬の適正水準を極端に低く置くと、買い手は「その報酬で後任は雇えない」と反論し、交渉全体の信頼を失います。適正水準は、同規模企業の役員報酬水準や、実際に後任を雇う場合の求人相場から説明できる額にしてください。

また、調整は「承継後になくなる費用」に限られます。オーナーが承継後も残って働く場合、その報酬は引き続き費用です。

自社の調整後利益を確認する

企業価値シミュレーターの詳細モードでは、役員報酬の適正水準・節税保険料・親族への家賃・一過性損益を入力すると、調整後営業利益と3手法の価格が同時に更新されます。どの調整が価格にいくら効くかを、その場で確認できます。

よくある質問

役員報酬の「適正水準」はどう決めればいいですか?

承継後に同じ役割を担う人を雇う場合の年収が基準です。年商数億円の中小企業なら800〜1,500万円が多く、買い手が親会社から経営者を派遣する場合はさらに低く見ることもあります。根拠を示せる額にしてください。

家族への給与は全額調整できますか?

実際に働いている家族の給与は費用のままです。実態のない給与、または業務に対して明らかに過大な部分だけが調整対象になります。

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