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年買法とは|営業権(のれん)の年数はどう決まるか

年買法は「時価純資産に、利益の数年分を営業権として足す」という、中小企業M&Aで最も使われる評価方法です。式は単純ですが、「何年分か」で価格が数千万円変わります。年数の決まり方を、実務の感覚で説明します。

株式会社Tsugiya M&A仲介の実務より | 更新 2026-09-20
この記事の要点
  1. 株式価値=時価純資産+調整後営業利益×営業権年数
  2. 年数は業種で1〜7年。中小企業の標準は3年
  3. 「社長が抜けても利益が何年続くか」が年数の正体。属人性の解消で延びる

年買法の式

株式価値 = 時価純資産 + 調整後営業利益 × 営業権年数

時価純資産は、貸借対照表の純資産を時価に直したものです。調整後営業利益は、役員報酬の適正化や一過性損益の除外を行った「実態の利益」です。営業権年数は、買い手が「利益の何年分までなら、のれん代として払えるか」を表します。

実務では「年買法」「年倍法」と呼ばれ、税引前の営業利益または経常利益を使うのが一般的です。利益に税金を掛けてから年数を掛ける流派もありますが、その場合は年数を長めに取るため、結果は大きく変わりません。

営業権年数の業種別レンジ

年数は業種によって1〜7年の幅があります。ストック性が高く、社長の個人技に依存しにくい業種ほど長く、属人性が高く参入しやすい業種ほど短くなります。

業種営業権年数(低〜中〜高)
SaaS・ストック型IT3〜5〜7年
調剤薬局/不動産管理3〜4〜5年
製造業/IT受託/介護/ビルメン2〜3〜5年
卸売/人材サービス2〜3〜4年
建設/運送/小売/飲食/宿泊/専門サービス1〜2〜3年

「中央値の3年」が中小企業M&Aの標準で、そこから会社の質で上下させます。詳細は業種別相場を参照してください。

年数を上下させる要因

年数を延ばすのは、契約に基づく継続売上(保守契約・顧問契約・管理契約)、許認可や特殊技術による参入障壁、社長以外のキーマンの存在、顧客の分散、成長トレンドです。縮めるのは、社長が営業も技術も握っている状態、上位1社への依存が30%を超えること、設備更新負担、業績の下降です。

買い手の頭の中にあるのは「社長が抜けた後、この利益は何年続くか」という問いです。年数はその答えそのものなので、社長の仕事を幹部に移していく取り組みが、そのまま年数の延長につながります。

写真はイメージです

計算例

営業権 2年(下限)80,000千円営業権 3年(中央)120,000千円営業権 5年(上限)200,000千円
調整後営業利益4,000万円の会社:年数だけで営業権が1億2,000万円変わる

純資産1億5,000万円(土地含み益1,800万円あり)、営業利益2,800万円、役員報酬2,400万円(適正水準1,200万円)、製造業の会社を例にします。

簿価純資産150,000
+ 土地含み益18,000
時価純資産168,000
営業利益28,000
+ 役員報酬の適正化12,000
調整後営業利益40,000
営業権(× 2年)80,000
営業権(× 3年)120,000
営業権(× 5年)200,000
株式価値(3年の場合)288,000

単位は千円。年数が2年なら2億4,800万円、5年なら3億6,800万円と、年数だけで1億2,000万円の幅があります。この幅をどう埋めるかが交渉です。

年買法の限界と、他の手法との併用

年買法は直感的で、売り手が納得しやすい一方、買い手側の投資回収の視点が入っていません。そのため実務では、EBITDA倍率法で「買い手が払える上限」を確かめ、DCF法で理論的な裏付けを取ります。3手法が近い値を示せば価格の説得力は高く、大きくずれていれば、どの前提に見解の相違があるかを探るヒントになります。

企業価値シミュレーターでは、この3手法を同時に計算し、年数を変えたときの感応度も確認できます。

よくある質問

営業権年数は税引後利益と税引前利益、どちらに掛けますか?

中小企業M&Aの実務では税引前の営業利益(または経常利益)に2〜5年を掛けるのが一般的です。税引後利益を使う場合は年数を長め(3〜7年)に取るため、結果は概ね同じ範囲に収まります。

赤字の会社の営業権はどうなりますか?

調整後営業利益がマイナスなら営業権はゼロとし、時価純資産を価格の下限とするのが実務慣行です。ただし役員報酬などを調整すると黒字になるケースも多いので、まず正常収益力を確認してください。

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