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中小企業の株価算定とは|3つの評価方法と計算例、費用・依頼先まで

「自社の株はいくらなのか」。上場していない中小企業には株価が付いていないため、必要になったときに計算で求めます。これが株価算定です。ただし、何のために算定するかで使う方法も答えも変わります。本記事では、M&A(会社売却)での株価算定を中心に、方法・計算例・費用・依頼先を順に説明します。

株式会社Tsugiya M&A仲介の実務より | 更新 2026-09-28
この記事の要点
  1. 株価算定は目的で答えが変わる。M&Aの売買価格と相続税評価額は別物
  2. 方法はコスト・マーケット・インカムの3アプローチ。中小企業M&Aでは年買法・EBITDA倍率法・DCF法を併用
  3. 相談段階の簡易算定は無料のことが多い。正式な算定書は数十万〜数百万円が目安

株価算定とは:目的によって「正しい株価」が変わる

株価算定(株式価値算定)とは、市場で値段が付いていない非上場会社の株式について、1株あたり、または会社全体の株式の価値を計算することです。中小企業で株価算定が必要になるのは、主に次の場面です。

場面使われる株価
M&A・会社売却(第三者への譲渡)M&A実務の評価(年買法・EBITDA倍率法・DCF法など)
相続・贈与、親族への株式移転税務上の評価(財産評価基本通達による相続税評価額)
増資・自社株買い・組織再編目的に応じて会計士等が算定(DCF法・純資産法など)
従業員・役員への株式譲渡(MBO等)税務上の時価を踏まえつつ当事者間で決定

同じ会社でも、M&Aで買い手が払う価格と、相続税を計算するときの株価は一致しません。M&Aの価格が相続税評価の数倍になることも珍しくありません。この違いはM&Aの株価と相続税評価額の違いで詳しく解説しています。以下はM&Aでの株価算定の話です。

評価方法は3つのアプローチに分かれる

コストアプローチ時価純資産法。会社が持つ財産で測る(下限の目安)マーケットアプローチEBITDA倍率法・類似会社比較法。他社の値付けと比べるインカムアプローチDCF法。将来の稼ぎを現在価値に直す中小企業M&Aの定番年買法=時価純資産+利益の数年分
株価算定の3つのアプローチ

株価算定の方法は、何を根拠に価値を測るかで3つのアプローチに整理されます。

コストアプローチは、会社が持っている財産から測る方法です。貸借対照表の純資産を時価に直す「時価純資産法」が代表です。清算価値に近く、価格の下限の目安になります。

マーケットアプローチは、似た会社の値付けと比べる方法です。上場している同業他社の株価倍率を当てはめる「類似会社比較法」や、M&Aの取引事例の倍率を使う「EBITDA倍率法」があります。

インカムアプローチは、将来の稼ぎから測る方法です。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く「DCF法」が代表で、理論的には最も正確ですが、予測の置き方で結果が大きく動きます。

中小企業のM&Aでは、これらに加えて年買法(純資産+営業権法)がよく使われます。時価純資産に、利益の数年分を「のれん(営業権)」として上乗せする方法で、コストアプローチとインカムアプローチの折衷といえます。

計算例:営業利益4,000万円の製造業

時価純資産1億6,800万円、調整後営業利益4,000万円、減価償却費1,000万円、有利子負債9,000万円、現預金6,000万円の製造業を例に、3つの方法で株価(株式価値)を計算します。単位は千円です。

方法計算株式価値
年買法168,000 + 40,000 × 3年288,000
EBITDA倍率法(40,000+10,000) × 4.5倍 − 90,000 + 60,000195,000
DCF法(割引率12%・成長率0%)FCF 28,000の現在価値合計 − ネット負債30,000203,333
3手法のレンジ 約1.9〜2.9億円

方法によって1億円近い差が出ます。これは計算ミスではなく、それぞれが違う立場の見方だからです。年買法は売り手の「会社に積み上げてきたもの」を、倍率法は買い手の「何年で投資を回収できるか」を反映します。実際の価格は、このレンジの中で買い手候補の顔ぶれと交渉によって決まります。

各方法の詳しい計算は年買法、EBITDA倍率法、DCF法の記事で解説しています。

写真はイメージです

株価算定の流れと必要書類

専門家に依頼する場合も、自分で概算する場合も、必要な資料はほぼ共通です。

基本資料:直近3期分の決算書(貸借対照表・損益計算書・販管費内訳・製造原価報告書)、勘定科目内訳明細書、法人税申告書(別表)。時価の把握:固定資産台帳、不動産の登記簿や固定資産税評価証明、保険積立金の解約返戻金、有価証券の明細。将来の見通し:今期の試算表、事業計画(あれば)、主要取引先や従業員の状況。

流れは、①資料の受け渡し、②役員報酬や一過性損益の調整(正常収益力の算定)、③資産・負債の時価評価、④複数の方法での計算と比較、⑤結果の説明、の順です。M&A仲介会社の初回相談での簡易算定なら数日〜2週間、第三者に提出する正式な株式価値算定書なら数週間〜1か月程度が目安です。

費用の目安と依頼先

株価算定の費用は、目的・会社の規模・求める精度で大きく変わります。一般的な目安は次のとおりです。

依頼先・内容費用の目安
M&A仲介会社・FAの簡易算定(相談段階)無料のことが多い
顧問税理士による相続税評価額の試算数万〜数十万円
公認会計士・評価会社の株式価値算定書数十万〜数百万円

売却を検討し始めた段階なら、まず無料の簡易算定で相場感をつかみ、買い手との交渉や株主間の調整で客観的な書面が必要になった段階で正式な算定書を依頼するのが合理的です。相続・贈与の株価は税務の領域なので、顧問税理士に確認してください。

無料で、自分の会社の株価を概算する

このサイトの株価算定シミュレーターは、上記の年買法・EBITDA倍率法・DCF法を同時に計算します。決算書から売上・営業利益・減価償却費・役員報酬・純資産・現預金・有利子負債の7項目と業種を入れると、3手法の株式価値レンジと計算過程が表示されます。無料・登録不要で、入力した数字は端末内で計算されます。

役員報酬の適正化や土地の含み益、属人性などの定性要因も反映できるので、「どの要因で株価が下がっているか」まで確認できます。

よくある質問

株価算定と株価評価は違うものですか?

ほぼ同じ意味で使われます。M&Aの文脈では「株価算定」「株式価値算定」「バリュエーション」、相続・贈与の文脈では「自社株評価」「株価評価」と呼ばれることが多いですが、どちらも非上場株式の価値を計算することです。

株価算定は無料でできますか?

概算であれば可能です。M&A仲介会社の多くは相談段階の簡易算定を無料で行っていますし、このサイトのシミュレーターでも決算書の数字から3手法の概算が出せます。第三者に提出する正式な算定書は有料です。

1株あたりの株価はどう出しますか?

会社全体の株式価値を発行済株式数(自己株式を除く)で割ります。株式価値2億円・発行済株式数2,000株なら1株10万円です。M&Aでは会社全体の価格で交渉するのが一般的です。

赤字の会社でも株価は付きますか?

付きます。時価純資産がプラスなら、その金額が評価の下限になります。役員報酬などを調整すると実態は黒字というケースも多く、許認可や人材に価値を見出す買い手もいます。

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