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企業価値評価(バリュエーション)とは|企業価値・事業価値・株式価値の違いと計算方法

「企業価値」「事業価値」「株式価値」。M&Aの資料や金融機関の説明で出てくるこれらの言葉は、似ているようで指しているものが違います。取り違えると、借入金の分だけ売却価格を誤解することになります。企業価値評価(バリュエーション)の基本を、中小企業の実例に沿って整理します。

株式会社Tsugiya M&A仲介の実務より | 更新 2026-09-28
この記事の要点
  1. 事業価値+非事業資産=企業価値、企業価値−有利子負債=株式価値
  2. オーナーが売却で受け取るのは株式価値。借入の分だけ企業価値より小さい
  3. 評価の前に、役員報酬などの収益調整と、資産の時価評価を必ず行う

3つの「価値」の関係

事業価値は、本業が生み出す収益力の価値です。EBITDA倍率法やDCF法で計算されるのは、まずこの事業価値です。

企業価値は、事業価値に、本業に使っていない資産(余剰な現預金、遊休不動産、投資有価証券など)の価値を足したものです。

株式価値は、企業価値から有利子負債(借入金・社債・リース債務など)を差し引いたものです。株主であるオーナーが売却で受け取るのは、この株式価値です。

式にすると「事業価値 + 非事業資産 = 企業価値」「企業価値 − 有利子負債 = 株式価値」です。実務では、現預金をまとめて足し、有利子負債を引く「ネットデット(純有利子負債)」の考え方で簡略化することもよくあります。

計算例:事業価値2.2億円の会社

220,500事業価値+60,000現預金+15,000遊休地-90,000有利子負債205,500株式価値単位:千円
事業価値から株式価値へ(計算例)

調整後EBITDA 4,900万円、倍率4.5倍の会社を例にします(単位:千円)。

事業価値(49,000 × 4.5倍)220,500
+ 現預金60,000
+ 遊休地(時価)15,000
企業価値295,500
− 有利子負債−90,000
株式価値(売り手の受取額の目安)205,500

「企業価値3億円」と聞いて3億円を受け取れると考えるのは誤りです。借入9,000万円は買い手が引き継ぐため、その分だけ株式の価格は下がります。逆に、借入を返済して現預金を残しておけば、同じ事業でも株式価値は上がります。

評価手法の使い分け

企業価値評価の手法は、コスト・マーケット・インカムの3アプローチに分かれます。株価算定の方法で詳しく説明していますが、使い分けの目安は次のとおりです。

純資産法(時価純資産):資産の多い会社、赤字の会社、清算価値との比較に。EBITDA倍率法:安定して利益が出ている会社。M&Aの交渉で最も共通言語になりやすい方法です。DCF法:成長中の会社や、将来計画がはっきりしている会社。年買法:中小企業M&Aの標準。純資産に利益の数年分を上乗せします。

1つの手法だけで判断せず、複数の手法の結果を並べて「レンジ」で捉えるのが実務の基本です。手法ごとの差には、それぞれの立場の見方が表れています。

写真はイメージです

中小企業の評価で必ず行う調整

決算書の数字をそのまま使うと、中小企業の価値は実態より低く出ることが多くあります。評価の前に次の調整を行います。

収益の調整(正常収益力):オーナーの役員報酬を承継後の適正水準に直す、私的な経費や節税目的の保険料を戻す、補助金や固定資産売却益などの一過性損益を除く。役員報酬の調整だけで評価額が数千万円変わる例もあります。

資産・負債の調整(時価純資産):土地や有価証券の含み損益、保険積立金の解約返戻金、回収できない売掛金や不良在庫、未計上の退職金債務などを反映します。

企業価値が高く評価される会社の特徴

同じ利益水準でも、評価の倍率や年数は会社の質で上下します。高く評価されるのは、継続契約などストック型の売上がある、許認可や技術で参入障壁がある、社長以外に事業を回せる幹部がいる、売上が特定の顧客に偏っていない、業績が成長傾向にある会社です。

逆に、受注や技術が社長個人に集中している、上位1社への依存が大きい、大きな設備更新を控えている、業績が下降している会社は低く評価されます。企業価値を上げる取り組みは、この「低く評価される要因」を1つずつ減らしていくことです。

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よくある質問

企業価値と時価総額の違いは?

時価総額は上場企業の「株価×発行済株式数」で、株式価値にあたります。企業価値は、時価総額に有利子負債を足し、非事業資産の扱いを調整したものです。

中小企業の企業価値評価は誰に頼めばいいですか?

売却を検討する段階ならM&A仲介会社やFAの無料の簡易評価で十分なことが多く、正式な書面が必要な場合は公認会計士や評価会社に依頼します。相続・贈与の株価は税理士の領域です。

のれん(営業権)は企業価値に含まれますか?

含まれます。事業価値のうち、時価純資産を超える部分がのれん(営業権)にあたります。年買法では「利益の数年分」として直接計算します。

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