Industry Benchmark

医療・介護・福祉の会社売却相場

介護・障がい福祉・訪問看護などの株式価値は、中小企業M&Aの実務では EBITDAの3.5〜6.0倍、または 時価純資産+実態利益の2〜5年分 がレンジです。この記事では、その根拠と買い手が見るポイント、計算例、売却前にできる準備を解説します。

EV/EBITDA倍率
3.56.0
中央 4.5倍
営業権年数
25
中央 3年
DCF割引率
9〜13%
非上場・小規模の目安
医療・介護・福祉のイメージ
写真はイメージです
この記事の要点
  1. 医療・介護・福祉のEBITDA倍率は3.5〜6.0倍、営業権は利益の2〜5年分が実務レンジ
  2. 利用者数・稼働率と、指定事業の種類(通所・訪問・入所・障がい福祉など)
  3. 介護報酬改定(3年ごと)による減収リスク

相場の見方:なぜ「3.5〜6.0倍」なのか

全業種の下限 2.5倍上限 12.0倍3.5倍中央 4.5倍6.0倍
EBITDA倍率:全業種の中での位置

非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。医療・介護・福祉の場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は3.5〜6.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の2〜5年分がレンジになります。

重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。

買い手は誰か

介護大手・医療法人グループ(エリア拡大)、異業種(不動産・建設・警備など)の参入、投資ファンド。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。

評価を押し上げるポイント

  • 利用者数・稼働率と、指定事業の種類(通所・訪問・入所・障がい福祉など)
  • 人員配置基準を満たす有資格者(介護福祉士・看護師・サ責)の定着
  • 加算の取得状況と処遇改善加算の適正運用
  • 施設が自社所有か賃借か。賃借なら契約の残存期間と承継可否

ディスカウント要因

  • 介護報酬改定(3年ごと)による減収リスク
  • 人手不足による稼働率低下。求人費が膨らんでいる会社は利益の質を疑われる
  • 行政指導・返還請求の履歴があるとディスカウントまたは取引不成立

計算例:医療・介護・福祉・売上2.80億円の会社

売上高280,000千円、営業利益18,000千円、減価償却費5,000千円、役員報酬15,000千円(承継後の適正水準10,000千円)、純資産70,000千円、現預金40,000千円、有利子負債60,000千円のモデルケースで試算します。

70,000時価純資産+69,000調整後営業利益×3年139,000株式価値(営業権法・中央)単位:千円
純資産+営業権法の中央値まで
正常収益力の調整
営業利益18,000
+ 役員報酬の適正化(15,000 − 10,000)5,000
調整後営業利益23,000
+ 減価償却費5,000
調整後EBITDA28,000
純資産+営業権法
純資産 70,000 + 調整後営業利益 × 2年116,000
純資産 70,000 + 調整後営業利益 × 3年139,000
純資産 70,000 + 調整後営業利益 × 5年185,000
EBITDA倍率法(ネットデット 20,000)
EBITDA × 3.5倍 − ネットデット78,000
EBITDA × 4.5倍 − ネットデット106,000
EBITDA × 6.0倍 − ネットデット148,000

この会社の株式価値の目安は 1.06億円 〜 1.39億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が5,000千円増え、営業権法では中央値で15,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。

売却前にできる3つの準備

  1. 利用者数・稼働率・加算の取得状況を月次で整理する
  2. 有資格者の雇用条件を整備し、承継後の定着を示す
  3. 運営指導の記録・是正状況を整理しておく

準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。

医療・介護・福祉の売却でよくある質問

赤字の介護事業所でも譲渡できますか?

可能です。指定(許認可)と利用者、人員は買い手にとって価値があり、稼働率改善を見込んで買収する事業者は多くいます。

株式譲渡と事業譲渡、どちらが有利ですか?

介護は指定の再取得が必要になる事業譲渡より、指定を引き継げる株式譲渡が一般的です。

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