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SaaS・ストック型ITの会社売却相場

SaaS・サブスクリプション型IT事業の株式価値は、中小企業M&Aの実務では EBITDAの6.0〜12.0倍、または 時価純資産+実態利益の3〜7年分 がレンジです。この記事では、その根拠と買い手が見るポイント、計算例、売却前にできる準備を解説します。

EV/EBITDA倍率
6.012.0
中央 8.0倍
営業権年数
37
中央 5年
DCF割引率
9〜13%
非上場・小規模の目安
SaaS・ストック型ITのイメージ
写真はイメージです
この記事の要点
  1. SaaS・ストック型ITのEBITDA倍率は6.0〜12.0倍、営業権は利益の3〜7年分が実務レンジ
  2. ARR(年間経常収益)と成長率
  3. 赤字先行のグロース期はDCF・倍率法では評価しづらく、ARRマルチプルで交渉することになる

相場の見方:なぜ「6.0〜12.0倍」なのか

全業種の下限 2.5倍上限 12.0倍6.0倍中央 8.0倍12.0倍
EBITDA倍率:全業種の中での位置

非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。SaaS・ストック型ITの場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は6.0〜12.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の3〜7年分がレンジになります。

重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。

買い手は誰か

上場SaaS企業(プロダクト補完)、事業会社(DX・顧客基盤獲得)、PE・グロースファンド、海外IT企業。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。

評価を押し上げるポイント

  • ARR(年間経常収益)と成長率。利益より売上倍率(ARRの2〜6倍)で語られることも多い
  • 解約率(チャーン)と純収益維持率(NRR)。NRR100%超は高評価
  • 顧客数と単価の分散。少数の大口に依存していないか
  • 開発体制の再現性(ドキュメント・テスト・引き継ぎ可能性)

ディスカウント要因

  • 赤字先行のグロース期はDCF・倍率法では評価しづらく、ARRマルチプルで交渉することになる
  • 創業者がプロダクトの設計思想をすべて握っていると承継後のロードマップが描けない
  • 無償ユーザーが多く有料転換率が低いと「見た目の顧客数」は評価されない

計算例:SaaS・ストック型IT・売上2.00億円の会社

売上高200,000千円、営業利益20,000千円、減価償却費3,000千円、役員報酬15,000千円(承継後の適正水準15,000千円)、純資産60,000千円、現預金70,000千円、有利子負債30,000千円のモデルケースで試算します。

60,000時価純資産+100,000調整後営業利益×5年160,000株式価値(営業権法・中央)単位:千円
純資産+営業権法の中央値まで
正常収益力の調整
営業利益20,000
+ 役員報酬の適正化(15,000 − 15,000)0
調整後営業利益20,000
+ 減価償却費3,000
調整後EBITDA23,000
純資産+営業権法
純資産 60,000 + 調整後営業利益 × 3年120,000
純資産 60,000 + 調整後営業利益 × 5年160,000
純資産 60,000 + 調整後営業利益 × 7年200,000
EBITDA倍率法(ネットデット -40,000)
EBITDA × 6.0倍 − ネットデット178,000
EBITDA × 8.0倍 − ネットデット224,000
EBITDA × 12.0倍 − ネットデット316,000

この会社の株式価値の目安は 1.60億円 〜 2.24億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が0千円増え、営業権法では中央値で0千円分、価値が上がっています。単位:千円。

売却前にできる3つの準備

  1. ARR・チャーン・NRR・CAC・LTVを月次で追えるダッシュボードを整備する
  2. 年間契約・前受課金の比率を上げ、解約率を下げておく
  3. ソースコード・インフラ・運用手順のドキュメント化

準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。

SaaS・ストック型ITの売却でよくある質問

赤字のSaaSでも評価はつきますか?

つきます。ARRの成長率と解約率が良ければ、利益ではなくARRの倍率で評価されます。ただし本シミュレーターは利益ベースなので、ARR倍率は面談で個別に試算します。

ARR5,000万円規模でも買い手はいますか?

います。上場SaaSや事業会社が、プロダクト補完や顧客獲得目的で小規模SaaSを買収する例は増えています。

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