- 不動産管理・仲介のEBITDA倍率は4.0〜7.0倍、営業権は利益の3〜5年分が実務レンジ
- 管理戸数と管理料率
- 自社所有の不動産を多く持つ場合、事業価値と不動産価値を分けて評価する必要がある
相場の見方:なぜ「4.0〜7.0倍」なのか
非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。不動産管理・仲介の場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は4.0〜7.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の3〜5年分がレンジになります。
重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。
買い手は誰か
大手・中堅管理会社(管理戸数の獲得)、ハウスメーカー・建設会社(管理の内製化)、投資ファンド。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。
評価を押し上げるポイント
- 管理戸数と管理料率。「1戸あたり◯万円」で評価する買い手も多い
- オーナーとの管理委託契約の継続性と解約率
- 仲介手数料(フロー)と管理料(ストック)の比率
- 宅建業免許・賃貸住宅管理業登録と有資格者
ディスカウント要因
- 自社所有の不動産を多く持つ場合、事業価値と不動産価値を分けて評価する必要がある
- 社長個人がオーナーとの関係を握っていると、承継後の解約リスクが見込まれる
- サブリース契約の逆ざやがあると簿外リスクとして引かれる
計算例:不動産管理・仲介・売上2.00億円の会社
売上高200,000千円、営業利益25,000千円、減価償却費3,000千円、役員報酬20,000千円(承継後の適正水準12,000千円)、純資産120,000千円、現預金60,000千円、有利子負債50,000千円のモデルケースで試算します。
| 正常収益力の調整 | |
|---|---|
| 営業利益 | 25,000 |
| + 役員報酬の適正化(20,000 − 12,000) | 8,000 |
| 調整後営業利益 | 33,000 |
| + 減価償却費 | 3,000 |
| 調整後EBITDA | 36,000 |
| 純資産+営業権法 | |
| 純資産 120,000 + 調整後営業利益 × 3年 | 219,000 |
| 純資産 120,000 + 調整後営業利益 × 4年 | 252,000 |
| 純資産 120,000 + 調整後営業利益 × 5年 | 285,000 |
| EBITDA倍率法(ネットデット -10,000) | |
| EBITDA × 4.0倍 − ネットデット | 154,000 |
| EBITDA × 5.5倍 − ネットデット | 208,000 |
| EBITDA × 7.0倍 − ネットデット | 262,000 |
この会社の株式価値の目安は 2.08億円 〜 2.52億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が8,000千円増え、営業権法では中央値で32,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。
売却前にできる3つの準備
- 管理戸数・管理料・オーナー数を月次で整理し、解約率を示す
- 管理委託契約書を最新の様式に更新し、承継条項を確認する
- 自社不動産の時価を把握し、含み損益を整理する
準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。
不動産管理・仲介の売却でよくある質問
管理戸数500戸程度でも買い手はいますか?
います。管理戸数ベースで評価するため、数百戸規模でも管理会社の統合ニーズは強く、地域の有力企業からも引き合いがあります。
自社物件の含み益は評価に入りますか?
入ります。時価純資産の調整として加算され、純資産+営業権法で反映されます。
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