- 調剤薬局のEBITDA倍率は4.0〜7.0倍、営業権は利益の3〜5年分が実務レンジ
- 処方箋枚数と門前医療機関の継続性(医師の年齢・後継者の有無が価格に直結)
- 門前クリニックの院長が高齢で閉院リスクがあると、営業権年数は下限に
相場の見方:なぜ「4.0〜7.0倍」なのか
非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。調剤薬局の場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は4.0〜7.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の3〜5年分がレンジになります。
重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。
買い手は誰か
大手・中堅調剤チェーン(ドミナント拡大)、ドラッグストア(調剤併設化)、地域の有力薬局、投資ファンド。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。
評価を押し上げるポイント
- 処方箋枚数と門前医療機関の継続性(医師の年齢・後継者の有無が価格に直結)
- 薬剤師の確保状況。薬剤師が承継後も残るかどうか
- 調剤基本料の区分、地域支援体制加算などの施設基準
- 在宅・施設調剤など、門前以外の処方箋の比率
ディスカウント要因
- 門前クリニックの院長が高齢で閉院リスクがあると、営業権年数は下限に
- 調剤報酬改定(2年ごと)による収益減リスクを買い手はディスカウント要因として織り込む
- 管理薬剤師が社長本人の場合、後任の確保が条件になる
計算例:調剤薬局・売上3.50億円の会社
売上高350,000千円、営業利益25,000千円、減価償却費4,000千円、役員報酬20,000千円(承継後の適正水準12,000千円)、純資産100,000千円、現預金70,000千円、有利子負債40,000千円のモデルケースで試算します。
| 正常収益力の調整 | |
|---|---|
| 営業利益 | 25,000 |
| + 役員報酬の適正化(20,000 − 12,000) | 8,000 |
| 調整後営業利益 | 33,000 |
| + 減価償却費 | 4,000 |
| 調整後EBITDA | 37,000 |
| 純資産+営業権法 | |
| 純資産 100,000 + 調整後営業利益 × 3年 | 199,000 |
| 純資産 100,000 + 調整後営業利益 × 4年 | 232,000 |
| 純資産 100,000 + 調整後営業利益 × 5年 | 265,000 |
| EBITDA倍率法(ネットデット -30,000) | |
| EBITDA × 4.0倍 − ネットデット | 178,000 |
| EBITDA × 5.5倍 − ネットデット | 233,500 |
| EBITDA × 7.0倍 − ネットデット | 289,000 |
この会社の株式価値の目安は 2.32億円 〜 2.33億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が8,000千円増え、営業権法では中央値で32,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。
売却前にできる3つの準備
- 処方箋枚数・応需医療機関別の構成を月次で整理する
- 門前医療機関の承継計画(後継医師)について情報を把握しておく
- 薬剤師の雇用契約・待遇を整備し、承継後の定着を示せるようにする
準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。
調剤薬局の売却でよくある質問
1店舗の薬局でも売れますか?
売れます。調剤薬局は1店舗単位でのM&Aが最も多い業種のひとつで、大手チェーンは常時買収候補を探しています。
門前の医師が引退予定でも評価はつきますか?
つきますが、営業権は保守的になります。後継医師の目処があるか、在宅など門前以外の処方箋比率が高いかで大きく変わります。
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