- 飲食業のEBITDA倍率は2.5〜5.0倍、営業権は利益の1〜3年分が実務レンジ
- 店舗の立地と賃借条件、造作の状態(改装が必要か)
- オーナーシェフの味と人柄で集客している店は、営業権年数が1年前後になる
相場の見方:なぜ「2.5〜5.0倍」なのか
非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。飲食業の場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は2.5〜5.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の1〜3年分がレンジになります。
重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。
買い手は誰か
外食チェーン(業態・立地の獲得)、食品メーカー(川下進出)、個人・法人の飲食参入者、投資ファンド(多店舗)。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。
評価を押し上げるポイント
- 店舗の立地と賃借条件、造作の状態(改装が必要か)
- 店長・料理長が社長以外に育っているか(オーナーシェフの店は属人性が高い)
- FL比率(食材費+人件費)と客数の安定性
- 給食・仕出し・冷凍食品など、店舗外のストック売上
ディスカウント要因
- オーナーシェフの味と人柄で集客している店は、営業権年数が1年前後になる
- 店舗ごとの契約で保証金・原状回復義務が大きいと差し引かれる
- 人手不足で店長候補がいないと多店舗の買い手も引き受けづらい
計算例:飲食業・売上2.50億円の会社
売上高250,000千円、営業利益12,000千円、減価償却費8,000千円、役員報酬12,000千円(承継後の適正水準8,000千円)、純資産30,000千円、現預金25,000千円、有利子負債45,000千円のモデルケースで試算します。
| 正常収益力の調整 | |
|---|---|
| 営業利益 | 12,000 |
| + 役員報酬の適正化(12,000 − 8,000) | 4,000 |
| 調整後営業利益 | 16,000 |
| + 減価償却費 | 8,000 |
| 調整後EBITDA | 24,000 |
| 純資産+営業権法 | |
| 純資産 30,000 + 調整後営業利益 × 1年 | 46,000 |
| 純資産 30,000 + 調整後営業利益 × 2年 | 62,000 |
| 純資産 30,000 + 調整後営業利益 × 3年 | 78,000 |
| EBITDA倍率法(ネットデット 20,000) | |
| EBITDA × 2.5倍 − ネットデット | 40,000 |
| EBITDA × 3.5倍 − ネットデット | 64,000 |
| EBITDA × 5.0倍 − ネットデット | 100,000 |
この会社の株式価値の目安は 62百万円 〜 64百万円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が4,000千円増え、営業権法では中央値で8,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。
売却前にできる3つの準備
- レシピ・オペレーションをマニュアル化し、社長不在でも回る体制を示す
- 店舗別のFL比率・客数・売上を月次で整理する
- 賃貸借契約・保証金・原状回復条件を確認しておく
準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。
飲食業の売却でよくある質問
飲食店は「居抜き売却」とM&Aのどちらが良いですか?
従業員・ブランド・仕入先ごと引き継ぐM&A(株式・事業譲渡)は居抜きより高くなるのが一般的です。利益が出ている店舗ほど差が大きくなります。
利益が少ない飲食店でも評価はつきますか?
役員報酬や家賃の調整で正常収益力を出すと、実態利益が見える場合があります。立地・造作・従業員に価値を見出す買い手もいます。
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