Industry Benchmark

人材サービスの会社売却相場

人材派遣・紹介・業務請負の株式価値は、中小企業M&Aの実務では EBITDAの3.5〜6.0倍、または 時価純資産+実態利益の2〜4年分 がレンジです。この記事では、その根拠と買い手が見るポイント、計算例、売却前にできる準備を解説します。

EV/EBITDA倍率
3.56.0
中央 4.5倍
営業権年数
24
中央 3年
DCF割引率
10〜14%
非上場・小規模の目安
人材サービスのイメージ
写真はイメージです
この記事の要点
  1. 人材サービスのEBITDA倍率は3.5〜6.0倍、営業権は利益の2〜4年分が実務レンジ
  2. 労働者派遣事業許可・有料職業紹介許可と、資産要件の充足
  3. 派遣法改正・同一労働同一賃金への対応不備は簿外債務リスクとして見られる

相場の見方:なぜ「3.5〜6.0倍」なのか

全業種の下限 2.5倍上限 12.0倍3.5倍中央 4.5倍6.0倍
EBITDA倍率:全業種の中での位置

非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。人材サービスの場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は3.5〜6.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の2〜4年分がレンジになります。

重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。

買い手は誰か

大手人材会社(専門領域・地域の獲得)、事業会社(人材確保の内製化)、投資ファンド(業界再編)。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。

評価を押し上げるポイント

  • 労働者派遣事業許可・有料職業紹介許可と、資産要件の充足
  • 登録スタッフ数・稼働人数・平均稼働期間
  • 派遣先の分散と契約単価
  • 専門領域(医療・介護・製造・IT など)の強み

ディスカウント要因

  • 派遣法改正・同一労働同一賃金への対応不備は簿外債務リスクとして見られる
  • 派遣先上位1社への依存が高いと減額
  • 社会保険の適用漏れ・未払残業があれば時価純資産で引かれる

計算例:人材サービス・売上6.00億円の会社

売上高600,000千円、営業利益24,000千円、減価償却費2,000千円、役員報酬20,000千円(承継後の適正水準12,000千円)、純資産80,000千円、現預金90,000千円、有利子負債30,000千円のモデルケースで試算します。

80,000時価純資産+96,000調整後営業利益×3年176,000株式価値(営業権法・中央)単位:千円
純資産+営業権法の中央値まで
正常収益力の調整
営業利益24,000
+ 役員報酬の適正化(20,000 − 12,000)8,000
調整後営業利益32,000
+ 減価償却費2,000
調整後EBITDA34,000
純資産+営業権法
純資産 80,000 + 調整後営業利益 × 2年144,000
純資産 80,000 + 調整後営業利益 × 3年176,000
純資産 80,000 + 調整後営業利益 × 4年208,000
EBITDA倍率法(ネットデット -60,000)
EBITDA × 3.5倍 − ネットデット179,000
EBITDA × 4.5倍 − ネットデット213,000
EBITDA × 6.0倍 − ネットデット264,000

この会社の株式価値の目安は 1.76億円 〜 2.13億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が8,000千円増え、営業権法では中央値で24,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。

売却前にできる3つの準備

  1. 派遣先別売上・稼働人数・単価を整理する
  2. 労務コンプライアンス(36協定・社保加入)の点検
  3. 許可の資産要件を満たす純資産・現預金を維持する

準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。

人材サービスの売却でよくある質問

登録者数が多いだけで評価されますか?

評価の中心は稼働人数と粗利です。登録者数は補助的な指標で、稼働率の高さと派遣先の分散が倍率を押し上げます。

紹介事業のみでも対象ですか?

対象です。有料職業紹介は許可とコンサルタントの人数で評価され、成約実績が安定していれば買い手がつきます。

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