- 医療・介護・福祉のEBITDA倍率は3.5〜6.0倍、営業権は利益の2〜5年分が実務レンジ
- 利用者数・稼働率と、指定事業の種類(通所・訪問・入所・障がい福祉など)
- 介護報酬改定(3年ごと)による減収リスク
相場の見方:なぜ「3.5〜6.0倍」なのか
非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。医療・介護・福祉の場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は3.5〜6.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の2〜5年分がレンジになります。
重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。
買い手は誰か
介護大手・医療法人グループ(エリア拡大)、異業種(不動産・建設・警備など)の参入、投資ファンド。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。
評価を押し上げるポイント
- 利用者数・稼働率と、指定事業の種類(通所・訪問・入所・障がい福祉など)
- 人員配置基準を満たす有資格者(介護福祉士・看護師・サ責)の定着
- 加算の取得状況と処遇改善加算の適正運用
- 施設が自社所有か賃借か。賃借なら契約の残存期間と承継可否
ディスカウント要因
- 介護報酬改定(3年ごと)による減収リスク
- 人手不足による稼働率低下。求人費が膨らんでいる会社は利益の質を疑われる
- 行政指導・返還請求の履歴があるとディスカウントまたは取引不成立
計算例:医療・介護・福祉・売上2.80億円の会社
売上高280,000千円、営業利益18,000千円、減価償却費5,000千円、役員報酬15,000千円(承継後の適正水準10,000千円)、純資産70,000千円、現預金40,000千円、有利子負債60,000千円のモデルケースで試算します。
| 正常収益力の調整 | |
|---|---|
| 営業利益 | 18,000 |
| + 役員報酬の適正化(15,000 − 10,000) | 5,000 |
| 調整後営業利益 | 23,000 |
| + 減価償却費 | 5,000 |
| 調整後EBITDA | 28,000 |
| 純資産+営業権法 | |
| 純資産 70,000 + 調整後営業利益 × 2年 | 116,000 |
| 純資産 70,000 + 調整後営業利益 × 3年 | 139,000 |
| 純資産 70,000 + 調整後営業利益 × 5年 | 185,000 |
| EBITDA倍率法(ネットデット 20,000) | |
| EBITDA × 3.5倍 − ネットデット | 78,000 |
| EBITDA × 4.5倍 − ネットデット | 106,000 |
| EBITDA × 6.0倍 − ネットデット | 148,000 |
この会社の株式価値の目安は 1.06億円 〜 1.39億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が5,000千円増え、営業権法では中央値で15,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。
売却前にできる3つの準備
- 利用者数・稼働率・加算の取得状況を月次で整理する
- 有資格者の雇用条件を整備し、承継後の定着を示す
- 運営指導の記録・是正状況を整理しておく
準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。
医療・介護・福祉の売却でよくある質問
赤字の介護事業所でも譲渡できますか?
可能です。指定(許認可)と利用者、人員は買い手にとって価値があり、稼働率改善を見込んで買収する事業者は多くいます。
株式譲渡と事業譲渡、どちらが有利ですか?
介護は指定の再取得が必要になる事業譲渡より、指定を引き継げる株式譲渡が一般的です。
医療・介護・福祉の売却相場、自社の場合は?
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