- 建設業のEBITDA倍率は2.5〜5.0倍、営業権は利益の1〜3年分が実務レンジ
- 建設業許可(特定・一般)と経営事項審査の点数
- 工事進行基準・完成基準の違いで利益が期ずれしやすく、3期平均での評価が基本になる
相場の見方:なぜ「2.5〜5.0倍」なのか
非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。建設業の場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は2.5〜5.0倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の1〜3年分がレンジになります。
重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。
買い手は誰か
同業のゼネコン・サブコン(施工体制と技術者の確保)、住宅・不動産会社(内製化)、地域の有力建設会社(エリア拡大)。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。
評価を押し上げるポイント
- 建設業許可(特定・一般)と経営事項審査の点数。公共工事の入札資格は買い手にとって大きな価値
- 1級・2級施工管理技士など有資格者の人数と年齢構成
- 元請比率と受注残。下請中心・単発工事中心だと営業権年数は短くなる
- 労災・安全管理の実績(重大事故の有無)
ディスカウント要因
- 工事進行基準・完成基準の違いで利益が期ずれしやすく、3期平均での評価が基本になる
- 社長が受注(地元人脈・営業)と現場管理の両方を担う会社は属人性が高いとみなされる
- 許認可の承継は「会社ごと(株式譲渡)」でないと引き継げないため、事業譲渡は不利
計算例:建設業・売上6.50億円の会社
売上高650,000千円、営業利益32,000千円、減価償却費6,000千円、役員報酬30,000千円(承継後の適正水準15,000千円)、純資産180,000千円、現預金120,000千円、有利子負債80,000千円のモデルケースで試算します。
| 正常収益力の調整 | |
|---|---|
| 営業利益 | 32,000 |
| + 役員報酬の適正化(30,000 − 15,000) | 15,000 |
| 調整後営業利益 | 47,000 |
| + 減価償却費 | 6,000 |
| 調整後EBITDA | 53,000 |
| 純資産+営業権法 | |
| 純資産 180,000 + 調整後営業利益 × 1年 | 227,000 |
| 純資産 180,000 + 調整後営業利益 × 2年 | 274,000 |
| 純資産 180,000 + 調整後営業利益 × 3年 | 321,000 |
| EBITDA倍率法(ネットデット -40,000) | |
| EBITDA × 2.5倍 − ネットデット | 172,500 |
| EBITDA × 3.5倍 − ネットデット | 225,500 |
| EBITDA × 5.0倍 − ネットデット | 305,000 |
この会社の株式価値の目安は 2.25億円 〜 2.74億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が15,000千円増え、営業権法では中央値で30,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。
売却前にできる3つの準備
- 受注残一覧と工事台帳を整備し、売上の見通しを示せるようにする
- 技術者の資格・年齢一覧を作り、若手の有資格者を育てておく
- 社長個人名義の建設業許可要件(経営業務管理責任者)を役員に分散しておく
準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。
建設業の売却でよくある質問
経審の点数は評価に影響しますか?
大きく影響します。公共工事の実績と入札ランクは、買い手が自力では短期間に取れないものなので、営業権の評価を押し上げます。
赤字決算の年があっても売れますか?
建設業は工期による利益の期ずれが多いため、単年赤字はそれほど問題視されません。3期平均と受注残で評価します。
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