- 宿泊・観光のEBITDA倍率は3.0〜5.5倍、営業権は利益の1〜3年分が実務レンジ
- 稼働率・ADR(客室単価)・RevPAR の推移と、OTA依存度
- 大規模修繕(数千万〜億単位)が控えている場合、その額は価格から引かれる
相場の見方:なぜ「3.0〜5.5倍」なのか
非上場の中小企業は、上場企業の類似会社倍率よりも低い水準で取引されます。株式をすぐに換金できない「非流動性」と、規模が小さいことによる事業リスクが織り込まれるためです。宿泊・観光の場合、業界の平均的な成長性、参入障壁、属人性の傾向から、EBITDA倍率は3.0〜5.5倍、純資産に上乗せする営業権は実態利益の1〜3年分がレンジになります。
重要なのは、レンジのどこに位置するかは会社ごとの「質」で決まるという点です。同じ営業利益3,000万円でも、下限と上限では株式価値が1.5〜2倍違います。以下の評価ポイントは、その位置を決める要因です。
買い手は誰か
ホテル運営会社・宿泊チェーン、不動産会社・REIT、観光開発企業、海外投資家、投資ファンド。買い手の種類によって重視する点が変わるため、「誰に売るか」で価格は変わります。
評価を押し上げるポイント
- 稼働率・ADR(客室単価)・RevPAR の推移と、OTA依存度
- 建物の築年数・修繕履歴・大規模修繕の予定(設備更新負担が最も重い業種)
- 土地建物の所有形態と含み損益。不動産価値で評価されるケースも多い
- インバウンド比率と季節変動
ディスカウント要因
- 大規模修繕(数千万〜億単位)が控えている場合、その額は価格から引かれる
- 借入が大きく、有利子負債が事業価値を上回ると株式価値がマイナスになることもある
- 女将・支配人の個人的な接客に依存する旅館は営業権が短い
計算例:宿泊・観光・売上3.80億円の会社
売上高380,000千円、営業利益20,000千円、減価償却費20,000千円、役員報酬15,000千円(承継後の適正水準10,000千円)、純資産150,000千円、現預金40,000千円、有利子負債220,000千円のモデルケースで試算します。
| 正常収益力の調整 | |
|---|---|
| 営業利益 | 20,000 |
| + 役員報酬の適正化(15,000 − 10,000) | 5,000 |
| 調整後営業利益 | 25,000 |
| + 減価償却費 | 20,000 |
| 調整後EBITDA | 45,000 |
| 純資産+営業権法 | |
| 純資産 150,000 + 調整後営業利益 × 1年 | 175,000 |
| 純資産 150,000 + 調整後営業利益 × 2年 | 200,000 |
| 純資産 150,000 + 調整後営業利益 × 3年 | 225,000 |
| EBITDA倍率法(ネットデット 180,000) | |
| EBITDA × 3.0倍 − ネットデット | -45,000 |
| EBITDA × 4.0倍 − ネットデット | 0 |
| EBITDA × 5.5倍 − ネットデット | 67,500 |
この会社の株式価値の目安は 0百万円 〜 2.00億円(各手法の中央値)。役員報酬の適正化だけで調整後利益が5,000千円増え、営業権法では中央値で10,000千円分、価値が上がっています。単位:千円。
売却前にできる3つの準備
- 稼働率・ADR・RevPARを月次で整理し、OTA依存を下げる
- 修繕履歴と今後の修繕計画を作り、費用を見える化する
- 不動産の時価(鑑定)を把握し、含み損益を整理する
準備には1〜3年かかるものもあります。売るかどうか決めていなくても、いまの評価額と「どの要因で下がっているか」を知ることが、承継の選択肢を広げます。
宿泊・観光の売却でよくある質問
借入が多い旅館でも売れますか?
売れます。不動産価値と稼働率で評価されるため、株式価値が低くても事業価値・不動産価値ベースで買い手が付くことは多くあります。
民泊・小規模宿泊施設も対象ですか?
対象です。許認可(旅館業法・住宅宿泊事業)と稼働実績があれば、運営会社や個人投資家の需要があります。
宿泊・観光の売却相場、自社の場合は?
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